現地での心構え
健康診断
日本国内では労働安全衛生法のもと、ほとんどの会社の事業所では年一回の定期健康診断を行っている。海外赴任の際にも、殆どの会社が赴任者に対して赴任前の健康診断を受けさせてから赴任させているが、赴任後においては健康診断の受診は本人に任されているケースも多い。そのような場合は、赴任者ご自身で健康診断を受診する事をお勧めしたい。
出 産
海外駐在員の年齢は益々低下傾向にあり、海外で出産するケースは着実に増えている。かつては言葉の問題、その国の医療水準や衛生状態への不安などから、日本に帰国して出産することが多かったが、現在は大きく改善されている。
駐在員家庭は一般的に、その国の最高の医療機関で診察・治療をしてもらえる。途上国でも看護師、助産師をはじめとするスタッフは英語だけでなく、日本語でのサービス体制を整える医療機関も増えてきて、保険会社も「日本語によるサービス体制」を宣伝している。
①出産に関する知識と用語
英語や赴任国の言葉をある程度話せる人も、妊娠・出産に関わる用語には馴染みがない。出産準備教室や定期健診には夫婦揃って参加し、基本知識と用語を一緒に勉強していくとよい。また、夫が出産に立ち会うのが一般的で、看護師や助産師とのやりとりも一緒にできる。出産に関する本は購入していくとよい。
②その国の文化や制度を知る
「出産は最大の異文化理解」といわれるほど、地域によっていろいろな習慣や考え方があって、出産経験のある人でも戸惑うことは多い。助産師の地位が日本に比べて格段に高く、社会保険での医療行為まで認められている国もある。また、正常分娩なら 3 日以内で退院させられる国が殆どなので、退院後のケアも考えておかなければならない。
③無痛分娩を理解する
無痛分娩を当たり前と考える国が多い。長い陣痛で母体の体力を消耗させないことにより、産後の回復を早めるという合理性がある。
④子育てのスタートの認識を
妊娠・出産は病気ではない。しかし、母子の保健システムとして、妊娠から子育て(12 歳くらい)までの医療支援体制が組まれていることの理解も必要である。母子手帳に従って、乳幼児健診や予防接種など行うことである。
⑤出産のときの子守り
出産後、産院にほぼ 1 週間いさせてくれる国は台湾、フランス、デンマークくらいである。上の子がいる場合、一晩か二晩、誰かに預かってもらうだけで済む(シンガポールでの一例)ので、それほど心配しなくてよい。産後は、通いや住込みのメイドさんを雇って家事をカバーしてもらいながら、ゆっくりと静養する。