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ESLで学ぶ意義

勝見 真理(アメリカ北バージニア州小学校ESL教師)

アメリカの教育カリキュラム

小学校では英語(language art、といって文法が中心)、リーディング、算数、社会、理科、体育、音楽、美術、コンピューター、図書館の時間、ガイダンス(学校カウンセラーによる授業で道徳に少し似ている)が主。英語、リーディング、社会、理科は担任が受け持つが、算数は能力別に編成されることが多く担任が持つとはかぎらない。コンピューターも重視され、各教室に4台常備されて専門の教員が担任の助手として教えてくれる。美術、音楽、体育はそれぞれ専門の教員がいる。

リーディングには特に力をいれており、読むことに興味をもたせるための各種のプログラムがある。カリキュラムにも図書の時間が組み込まれており(週に2時間)、司書が読み語りをしたり生徒が好きな本を図書館から借りたり(何冊でもいい)して1週間後に返す。本をよく読む生徒は格好がいいという風潮があり、一般的に子どもも大人もよく読書をする。

ESLの就学環境

ESLに入る生徒が抱える問題点としては、当然のことながら英語力の問題がある。レベルの差はあるにせよ、授業にフル参加できないとか、宿題や課題に時間がかかるなどの点がよくみられる。また、スピーキングがあまり上手にできないという点でネイティブの友達の輪に入るのに時間がかかる点もよく見受けられる。ESLのクラスでは、そういう問題をできる限り解消できるように教師が生徒の担任と話しあい、宿題や課題が困難であれば量を調整し、ESLのクラス中にできるよう工夫をしている。バディー(よい友達という意味)といって、ネイティブの生徒がESLの生徒と1対1で面倒をみる友達をアレンジするなどの工夫もしている。バディーになる生徒はしっかりしていて勉強もでき、責任感のある生徒が多い。バディーが仲介になり、ほかのクラスメートの輪にESLの生徒が入りやすくしてくれることが多い。

ESL制度と授業構成

現地校の授業は担任の方針によってまちまちだが、一般的に宿題やプロジェククトが多い。しかしそれは上述したように、英語を母国語としない生徒にはESLで援助するので、それほど負担にはなっていないはずである。英語を母国語としない生徒には、新学期の開始時期にESLが必要であるか否かを決定するテストを行う。そして生徒の英語力が社会や理科の授業についていけるかどうかなど、ESLの教師と担任の教師が相談しながら判断する。ESLのクラスには、ネイティブの生徒たちが、たとえば「英語」や「社会」の授業をしているときにESLに来るという具合になっている学校が多い。

ESLプログラムは郡ごとに運営されていて、その郡のESLの教師が月に一、二度会議をもち、カリキュラムや時間割り、授業運営などに一貫性があるようにしている。例えばバージニアのラウドン郡では、小学校のESLは午前と午後に分け、午前は幼稚園と1年生、午後の2時間半は2年から5年生というように学齢によるクラス編成をしている。

一般的なESLの授業形態は、小学校では午前はネイティブの授業、午後はESLの教室に来て英語の授業を受ける。これを英語でpull-outと呼ぶ。中学校になると、self-containedと呼ばれ、体育や音楽など実技の授業以外はほとんど1日中ESLで授業を受ける。

ESLの教師が英語、社会、理科などを教え、高校もそれに準ずる。学校によっては、ESLの教師がネイティブのクラスにESLの生徒と出席し、横で手とり足とり援助する所も多い。これは、ESLの生徒がネイティブのクラスに参加していけるようにという考えから行われている。

教師間のギャップ

アメリカでは、ESL制度が移民人口の増加に伴って需要も高まり、プログラムも拡大されつつある。制度としてはいい仕組みだと思っている。ただ、教師の中には英語がうまく話せないというだけで、他はネイティブの生徒と変わらないということがわからない教師がいる。ESL側の希望は、より早くESLの生徒がネイティブのクラスにフルに参加できるようになることなのに対し、担任の教師は生徒が「完璧」に英語ができるようになるまでESLが必要と考え、ギャップが生じる場合もある。

こういうギャップも、英語が上達すると同時にESLの子には他にもいろいろなスキルがあるとわかると、また対応も変わってくるはずである。ESLの教師には、外国に行った経験があったり、違う文化に興味を持ったりする教師が多く、ESLの生徒に対しても理解があり教え方を工夫してくれる。また、保護者が子供をESLに入れたくないならばそれも可能なので、その旨をESLの教師に相談するとよい。

家庭での言語教育

現地校の教師で「家庭でも英語で会話して下さい」という人が少なからずいるが、それは多くのESLの専門家は勧めない。母国語できちんと読み書き話せるというスキルが第二外国語の上達も促すという研究結果も出ている。家庭以外では英語の生活なのだから心配しなくても英語はかならず上達する。しかしそのためには、スポーツチームや課外活動などを通じて、ネイティブの友人をつくり、アメリカ社会の一員だという意識をもつことが大切である。同時に補習校などを通じて日本人の友達も大切にし、家庭では日本語で一貫して生活することが望まれる。

日本の文化や言葉はきっちり守り、一方でアメリカや他の国の文化や生活習慣を尊重し学んでいこうという態度を、保護者がしっかりもっていることが大切である。