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唐辛子禁止令

中野 朋子(会社員)

観光客が食べる料理と現地の人が食べる料理は、同じベトナム料理とはいえかなり異なります。地元の人が食べる料理は一言で言うと「濃い」です。

ベトナムに来て間もない頃は、店の衛生状態や氷に過敏になっていましたが、慣れてくると観光客向けではなく地元の人と同じように食べてみたいと思うようになり、外国人客がいない、風呂の椅子が並んだような屋台や食堂で食事を楽しむようになっていました。

気がつけば、抵抗があったハーブも強烈な臭いがする海老を発酵させて作るタレも平気で、ベトナム人にすら驚かれるようになっていました。ところが数年前のある日、胃がねじれるように痛くなり、耐えられなくなって日本人医師のいる病院へ行きました。

先生は最初「ストレスが原因」と思われたようで「海外、特にベトナムのような国で生活していると知らないうちにストレスが溜まりますからね」という話になりましたが、その当時は仕事や生活を楽しんでいた時期だったので、正直に「ストレスはほとんど感じないんですが」と話しました。そのあと、普段の食事についての話になり、そこではじめて胃が痛くなった原因が判明しました。

「それだけ唐辛子を食べていれば、誰だって胃を悪くしますよ」

考えてみると、朝、フォーを食べる時にも生の唐辛子をまるごと一本、昼に食堂で2~3本食べていました。先生の指示で当分の間「唐辛子禁止」、他にも「油物、生もの、香辛料をたくさん使った料理は避けましょう」、つまりベトナム料理は食べられないということになり、当時の私にとってはショックでした。食事は朝昼晩パンのみ。ベトナム人からの食事の誘いも断り(これが一番辛かったかもしれません)、胃薬も飲んで1週間ぐらいでやっと胃の痛みが治まりました。

その後、久しぶりにフォーを食べる時に唐辛子を一切れ入れてみました。「辛い!」。そこには涙目になっている自分がいましたが、今まではこの何倍もの唐辛子を入れて感覚が麻痺していたんですね。それに懲りて以来、外食する時は適度な辛さ、味付け、衛生的な店を選ぶように気をつけています。

最後にベトナムの医療事情について。ハノイ、ホーチミンでは日本語で受診できる病院が増えているので、言葉の面で心配する必要はあまりありません。しかし設備面では、他の東南アジア先進国に比べると遅れているので、治療内容によっては他の病院に行ったり場合によっては海外に搬送されたりします(過去に盲腸でタイへ搬送された人がいたそうです)。予防接種はA型肝炎、B型肝炎、破傷風、狂犬病などは外国人向けの病院ではほとんど接種できますので、赴任前に予防接種に行く時間がなかったという場合でも安心です。ただ、日本人医師のいる病院に行っても日本の薬は処方されないので、心配な方は多めに持参されたほうがいいでしょう。