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海外生活で大切なこと

加藤みぎわ(会社員)

約10年続いたアメリカ生活を経てシンガポールに移り早や5年が過ぎていこうとしています。国も文化も違う新しい環境での生活は2回目であっても、職場での環境はもちろん車の運転から始まり日用雑貨を確保する場所を探すに至るまで初めての体験ばかりでした。数回出張で訪れていたシンガポールのイメージはとても良く、この国だったら仕事も私生活も充実して過ごせるという確信と期待で一杯でした。

シンガポールでの生活が始まって数か月が経過し、現地の習慣や考え方等が見えるようになってきた頃、ふと気づくと生活に違和感を覚えるようになってきました。「シンガポール流」を自分が慣れ親しんだ環境のものと比べてしまうようになり、仕事に対する姿勢の違いや公共の場でのマナーの違いなどが気になり始めてしまったのです。国・人種・文化・歴史が異なればあって当たり前の「特色」を自分の物差しで測ってしまったことで寸法が合わなくなってしまったのだと思います。その後はいうまでもなく悪循環となり普段気にもならないものが気になるなど、シンガポールでの生活がまったく楽しめなくなってしまいました。

しかし、そんな考えは長くは続きませんでした。きっかけは予期もしない足首の靱帯損傷で松葉杖を使っての生活が始まったことにありました。ある日、歩くことも車を運転することもできず、3分ほどの距離をタクシーで移動した後、支払いをしようとすると運転手がお金を受け取らないのです。ケガをしているから無料でよいというのです。違う日に屋台街で食事をするために空席を探していると、見ず知らずの少年グループが自分たちの席を譲ってくれたのです。人込みを歩いていても会社にいても、周りの人々が気を遣ってくれ、シンガポール人の優しさに感動させられました。松葉杖を突きながらの目線で見えたシンガポールは本当に素晴らしく、それからの生活に大きな変化をもたらすきっかけを与えてくれました。その後は自然に自分がこの社会に受け入れてもらっているという気持ちになり、こちらもこの社会を受け入れていこう、良い所を見ていこうと思う気持ちに変わっていきました。

どの国で生活をしても良い所と悪い所が見えてきます。同時に自分の文化・日本の誇りに思える所、これから改善しなければならない所が見えてきます。異国での生活を通して教えられることから自分自身の世界・視野が広げられていくのを感じます。多文化社会を目指すシンガポールでは人種も異なれば宗教も違う人々が共に生活をしています。職場ではもちろん多種多様な価値観を持った人々がお互いを尊重しあわなければやっていけない現実があります。この体験は現在海外で仕事をしている中で大きな助けとなりました。シンガポールという国に住まわせてもらっているという感謝の心を忘れずに、これからもたくさんのことを学ばせていただきたいと思っています。