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海外一人暮らしの安全対策

佐藤 可南子
家族と暮らしていると防げる事故も、一人暮らしだと気づかれず大事件になってしまう場合がある。以下は夜中のベランダで体験した出来事である。
タイに赴任して半年後、その日は帰宅直後に電気が不通になるというトラブルで奔走し、すっかり疲労していた。一段落したので洗濯物を干そうとベランダへ出たところ、突風でドアが閉まってしまった。まさか、鍵なんてことは……とドアノブを回したところ開かない。前の住人が設定していたのか、外から開けられないようにがっちりとロックがかかっていた。
困った。26階では身動きがとれないし、一人暮らしなので助けてくれる人が帰ってくるわけではない。翌日からは週末に入るので、月曜になるまで同僚も気づかないだろう。水はどうする。トイレにも行けない。携帯も家の中だ。私の人生はここで終わるのだろうか。
声の限りに助けを求めた結果、4時間後に28階の住人が発見。窓越しに事情を説明すると、セキュリティーを呼ぶと言ってくれた。しかし、連絡の行き違いか誰も来ない。私はただひたすら助けを待った。玄関から助けが入ってくるのではないか、いまかいまかとドアにへばりついて部屋の中を見たが、なんの気配もなかった。 乾季の夜は肌寒い。疲れたので 洗濯物を着込んで月が東から西へ移動するのをじっと見ていた。そのうち夜は明け、車の行き交う道路が騒がしくなってきた。
だが、受付が出勤するころになっても動きはなく、日もだいぶ高くなってきた。いくらのんきなタイとはいえ、あんまりだ。助けが遅すぎる。 午前も10時になったころだろうか、再度助けを呼んだ。1時間ほど経ったところで昨夜の住人が窓から顔を出した。「君、まだそんなところにいるのかい」。今度こそは、と英語の分かる受付を呼んでもらい、ほどなく救出された。 後日、当直日誌を確認して分かったのだが、セキュリティースタッフはその夜一度は駆けつけたものの、「深夜ドアを蹴破るのは近所迷惑」と判断し、立ち去っていったという。 今回は、多少涼しい乾季に起き、窓を開けている部屋があったので運がよかった。これが真夏ならば、みな窓を締め切って冷房をしているところだ。果たして周囲に気づいてもらえたのだろうか。
 一人暮らしで危険なのは、事故が発見されにくい点だ。可能であれば一日に一度日本の自宅か同僚の家にワンコール入れて無事を知らせるなどの工夫をしたい。万が一連絡がない場合、誰かに確認してもらうなどの連絡網も作っておくとよいだろう。

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