教育の選択(4)

現地校の状況

ほとんどの現地校、とくに英国の現地校では、校長がかなりの権限を持たされているため、校長が交代すると学校の雰囲気がガラリと変わってしまうので注意したい。帰国者の体験談も参考にはなるが、ともすると良い話ばかり強調されるし、何年か経てば校舎以外はまったく別の学校になっているかもしれない。もし、「下見出張」が認められるのなら、現地に行って実際に学校を訪ねてみることをすすめる。
学校の所在地などは、各国大使館の広報部などで教えてもらえる。英国の場合はブリティッシュカウンシルで教えてくれる。
http://www1.britishcouncil.org/jp/japan.htm
英国の教職員団体である英国教育振興会(EDA)の日本事務局は、後楽園イングリッシュセンター(電話03-3515-6363)に置かれている。

学校選択の仕方

日本人学校がいいか、現地校あるいは国際学校がいいかで悩むケースは多く、親子で希望が異なる場合もある。この問題はまず、英語圏の先進国と、そうでない国とで分けて考える必要がある。前者では、「せっかくのチャンスなので、英語を将来の財産にさせたい」と単純に考えて現地校に子どもを入れることも許されるが、発展途上国では教育の質が心配だし、フランス語圏やドイツ語圏でも「まず英語ができなければ」と国際学校を選ぶ例も少なくない。
海外の邦人社会はもともと私立学校志向が強いが、かつては日本人学校からでないと有名進学校に合格できなかった。ところが、少子化が進むにつれ、生徒確保のために「帰国子女枠」を設ける学校が増えてくると、現地校や国際学校で3~4年頑張ってくれば有名校でも入れるようになった。入学後は何のフォローもしない学校がほとんどだが、とにかく入学だけはさせてくれるようになっている。
ただし、親の任期が短縮されたりして2年程度で帰国することになってしまうと、年齢や環境によっては母語や自我の確立の面で悲劇的なことが起こり得る。3年以内の滞在であれば、英語圏の先進国といえども日本人学校を選んだ方が「得だ」という考え方も説得力がある。海外に連れて行かれる子どもたちが、ともすると、こうした親の功利的な発想に振り回されることになるのは心が痛むが、いちがいに批判もできないのが現実である。

日本人学校のレベル

日本人学校中学部の教育レベルについて、不安を感じる保護者も多いようだ。高校進学のことを考えて、小学部卒業と同時に帰国してしまう話もよく耳にするが、とんでもない誤解である。教員の8割は日本政府の派遣教員(競争率約6倍の難関を勝ち抜いて選ばれた現役教師)であり、資質的には優秀である。これだけの教育スタッフをそろえた学校は、国立・私立学校とも日本国内にはなく、教育内容には基本的に問題はないとみてよい。
国内の高校の側からみて、日本人学校のどういう点が評価されているかを挙げると、 次のようになる。
○家庭的な雰囲気
年齢・性別を超えて子ども同士仲がよく、思いやりのある子が多い。
○それぞれの家庭が安定
両親が健康で一緒に暮らしているため、落ち着いた素直な子が多い。
○転入・転出が頻繁
ほぼ全員が転校経験者なので、適応力・柔軟性・コミュニケーション能力に長けてくる。
○偏差値の輪切りがない
学力に幅があるが、底辺の子は少ない。各自の得意分野でリーダーシップが発揮できる。
一方、欠点はこれらの裏返しになるが、帰国したときにこういったメリットを感じさせない生徒は編入試験で苦労するし学力も伸びない。
せっかく通うのなら、日本人学校の良い点を見据え、自覚して楽しい学校生活にしてほしい。

現地校のESLについて

アメリカ現地校の「ESL(English as a Second Language)」には、実にさまざまなかたちがあるが、一般的には「英語圏以外で育った子どもに(母国語としての)英語を取り出し指導すること」という意味で使われている。つまり、日本で生まれた子どもがアメリカに行って、英語での教育についていけるような特別指導を受ければ、それがESLである。 指導を受けられる条件は、各地域の教育委員会によるし(経費は地域住民の負担)、ESLのない学校も少なくない。授業内容は、これまた千差万別で、テキストをまったく使わない例もある。しかし、できるだけ早く普通学級の授業についていけるようになることが目的なので、こだわる必要もない。
問題は、「せっかく指導しても、日本の子どもは数年で帰国して、それっきり英語を忘れてしまう」という根強い誤解にどう対処するかである。地域社会に溶け込まず、日本の学習塾に通いながら現地校に来られては、「米国市民」の教育現場としては困るわけだ。ここ数年、ESLが実質的に「日本人の隔離教室」となってきている例も見られるようになった。保護者の教育方針が問われる時代になっている。

日本人学校の設立

どこの日本人学校も、設立当初は「すべての在留邦人が結束して維持する」という熱意を前提として設立されている。しかし、年数が経過するうちにそうした意識は薄れて、「もとからある」というとらえ方に変わってくる。
とくに最近、「海外→海外」の横滑り赴任が増えてきたこと、国内の高校・大学の多くが英語での編入・入学を認めるようになってきたことなどもあって、発展途上国でも現地校や国際学校を選択する例が増えてきた。つまり、日本人学校も「選択肢の一つ」と考えられるようになってきたのである。現地校や国際学校に通う子どもが多くなれば、補習授業校がほしくなるので、在留邦人組織のなかには補習授業校併設を決断するところも出てきている。
では、「補習授業校があっても、日本人学校を別に設立できるのか」となると、難しいといわざるを得ない。日本人学校設立が認められるための前提は上記のとおりだし、毎年世界各地から複数上がってくる設立要望との競合があるからである。政府予算は限られているので、「必要性+緊急性」を規準に優先順位がつけられる。当然ながら、補習授業校を全日制の日本人学校に改組し、児童・生徒全員がそのまま残る場合が最優先される。そうなると、よほどのことがない限り(在留邦人が、どれだけ結束できるかだが)補習授業校と別に日本人学校を設立することはできないと思われる。