海外赴任リロケーションガイド赴任の準備方法や手順など、生活の基盤となる情報をご紹介

家を売却する

売却するまでの流れ

海外赴任を契機に自宅を売却したい場合は、大まかに以下のような手順で進める。

1物件の価格査定

まずいくつかの不動産会社に連絡して、大まかな査定金額を提示してもらう。多くの不動産会社では、物件の築年数や広さなどをメールで知らせるだけで「簡易査定」をサービスで行っている。他社の簡易査定を参考にして、自分なりの大まかな売却金額をイメージしておく。

2不動産業者へ媒介を委託

不動産会社の営業マンに実際に物件を見てもらい、さらに詳細な査定金額の提示を受ける。提示された査定金額と住宅ローンの残高を比べて、最終的に売却するかどうかを決める。委託方法は、1社のみに依頼する「専任仲介」と複数社に依頼する「一般仲介」がある。

3購入予定者の内覧

購入予定者の内覧希望は、「平日の夕方から夜にかけて」と「週末」が多い。内覧希望にはいつでも対応できるようにしておく。

4売却条件の決定

価格以外の希望する場合、購入予定者への説明もれがないように不動産会社に伝える。

5売買契約の締結

物件価格の 10%程度の手付金を受領し、売買契約書を締結する。原則として、売り主、買い主、不動産会社の3社が一堂に会して行われる。

6物件の引渡し、残金の決済

売買契約の締結から2週間〜1か月後に、物件の引渡しと残金の決済が行われる。不動産会社に仲介を依頼してから前述のプロセスを経て、残金の決済まで通常早くても2〜3か月を要する。不動産市況の低迷から、さらに日数を要する場合も多い。

赴任までに売れなかった時は?

不動産市況の低迷からなかなか買い主が見つからず、赴任の日を迎えてしまう場合も多い。
多くの不動産会社は売り主が海外にいても対応してくれるが、手続きは若干煩雑となる。最近では、e メールのやりとりが当たり前になり、遠距離でのコミュニケーションが容易になったため、時差や通信費を気にせずに海外と国内の連絡が可能となった。そのため、売り主が海外に居住していても条件交渉などが不利となることは殆どない。
買い主が見つからないまま赴任しなくてはならなくなっても、事情を不動産会社に説明し、きちんと対応をとってもらうようにする。媒介を委託する際に、海外赴任者である旨を話し、対応が可能な業者かどうかもよく見極めておく必要があるだろう。
不動産会社としては、内覧希望者が現れたらすぐに物件が見せられるような状況(鍵を預ける)、また売り主にすぐに連絡がつき条件交渉などの返答がスムーズにもらえるような状況であれば、今までどおり物件の募集に力を入れてくれる。
但し、交渉がまとまり売買契約に進むと契約のために代理人を立てる等、煩雑な手続きが生じてくる。
海外からの不動産業者とのやり取りや手続きが負担となるようならば、売却を取りやめて賃貸や空き家のままにすることを検討する。賃貸借契約であれば、郵送で契約書を取り交わすことができる。契約書に捺印する印鑑も実印である必要はないので、赴任者にとっての負担は売却に比べて軽い。
いずれにしても、不動産会社とよく相談して赴任後の方針を決める。前述のリロケーションの専門会社は賃貸を主体としているが、売却の相談にも応じてくれる。
リロケーション専門会社であれば、海外赴任者とのやり取りには慣れているので何かと安心である。

赴任中の売却は可能か

海外駐在中に当初の予定を変更して、持ち家を売却したくなった場合に、海外に居住したまま売却をすることは可能なのであろうか。
手続きが煩雑になることを覚悟すれば、海外に居住したままでも持ち家を売却することは可能である。まずは不動産会社に e メールや電話などで海外からの依頼に対応してもらえるかどうかを確認する必要がある。
海外からの依頼だからといって、購入希望者への広告活動や条件の交渉で売り主が不利になるようなことはない。
手続きが煩雑になるのは買い手が見つかり、売買契約から物件の引渡しのプロセスに進んでからである。海外に居住する売り主は、売買契約の締結や代金の受領、物件の引渡しについて、親族などを代理人として立てる必要が発生する。
代理人を選任するには委任状が必要だが、海外赴任者の場合は国内に実印の登録がないため赴任地の最寄りの大使館や領事館に出向き、館員の面前で委任状にサインをする。大使館・領事館はそのサインが間違いなく本人のものであることを証明する書類を発行してくれる。このサイン証明を、委任状に添付して日本へ送付する必要がある。
サイン証明は売買契約締結のときに必要なほか、代金の決済と引渡しが完了したあとにも必要となる。すなわち、所有権の移転登記と抵当権の抹消登記を司法書士に依頼する際にも委任状が必要となるので、最低 2 回は最寄りの大使館・領事館に出向く必要がある。