海外赴任リロケーションガイド赴任の準備方法や手順など、生活の基盤となる情報をご紹介

現地での生活の始め方

在留届の提出

日本人が外国に3か月以上滞在する場合は、在外公館(日本国大使館・総領事館など)に「在留届」を提出しなければならないと、旅券法第16条に定められている。在外公館の窓口にある所定用紙に必要事項を記入して提出するが、遠隔地の場合は用紙を郵送してもらうこともできる。
在留届は、滞在する国で日本政府の行政サービスや緊急連絡などを受ける場合の基礎的な資料となる。たとえば、事件、事故、災害などが起きた場合、在外公館は在留届をもとに救援活動を行うことになる。
1989年の中国・天安門事件で「日本大使館は何もしてくれない」と文句を言った人たちの多くが、在留届を出していないために大使館から連絡できない人たちだった。 また、在留邦人(その国に住んでいる日本人)が在外公館で「パスポートの再発給」「戸籍・国籍に関する事務」のほか各種の証明事務などを受ける場合にも在留届は必要になる。 さらに、政府が在留邦人の教育・医療・安全などの対策を検討する際の基本的な資料にもなる。したがって、在留届を未提出の人が、たとえば「子どもの教科書をほしい」といっても、在外公館では渡せない。

赴任・転居のあいさつ

赴任地に着いたら、あまり時間をおかずに日本の両親や親戚、友人・知人などに赴任・転居の知らせを出すようにしよう。両親や兄弟などの近しい人には、無事に到着した旨を電話やファックスで知らせてもよいが、親戚や友人・知人などには、できれば絵ハガキに近況などを書き添えて出すようにしよう。到着直後の率直な気持ちをつづることは、日本で世話になった人びとに感謝の気持ちを表すことでもある。
また、便りを書くことにより漠然とした不安が和らいだり、気持ちが整理できたりする効果もある。「早く出そう」と焦る必要はないが、「落ち着いたら出そう」では、いつまでたっても書けない。
夫の勤務先の関係にはすぐに挨拶回りをするだろうが、会社が違っても、近くに日本人の家族が住んでいる場合などは、早めに挨拶だけはしておくようにしよう。毎日の買い物から子どもの学校や病院のこと、また日本人会やボランティア活動など、現地での生活に必要な情報やアドバイスを得るためにも、最初の出会いを大切にしたい。 新しい知り合いも増えるので、住所録の整理も大変になる。仕事上の相手なら、名刺整理帳を利用して、業務別に整理しておくと便利である。個人的なつきあいでクリスマスカードや年賀状のやりとりが必要な知人・友人は、横書きの「差し替えカード式」を使って整理すると機能的だ。パソコンのEメールのソフトには住所録がついているので、それを使って整理してもよい。

ライフラインの手続き

赴任国に到着すると、一般には現地の役所への届出は必要ない(公用パスポートで赴任する場合は、外交官に準じた手続きが必要になる)。ただし、すでに説明した通り「在留届」を管轄の日本公館に提出するのを忘れないこと。また、就労ビザの関連などで必要な手続きが残っていたりする場合もあるので、確認しておこう。
電気・ガス・水道の開栓は、不動産業者に手続きを頼めばよい(家のオーナーがやっておいてくれる場合もあるし、アパートなら管理人が手配してくれることもある)。開栓の日が指定された場合は、誰か立ち会う必要がある。うっかりして外出などしてしまうと、予約をしなおすことになりかねない。検針や代金支払い方法も確認しておこう。 電話(固定電話)の手続きも不動産業者に頼んでみてもよいし、家のオーナーが自分名義の電話をそのまま使わせてくれる場合もある。国や地域によっては電話会社を自由に選べるようになっているため、自分で電話会社に出向いて手続きをとらなければならない場合もある(とくに国際電話のための保証金が高額なとき)。携帯電話は、自分で電話会社か代理店まで行くしかない。
ゴミの出し方についても、家の下見の段階で確認しておこう。ドイツのように分別回収が徹底している地域で好い加減なことをすると、近隣と気まずくなったりトラブルになったりしかねないので注意しよう。

住宅トラブル

海外駐在の魅力の一つは、豊かな居住生活を送れることであろう。しかし一方で、日本では経験することのないような住宅トラブルに巻き込まれ、かえってストレスを感じてしまう場合があるのも事実である。
海外の住宅で最もトラブルになりやすいのは、入居中および退去時の貸し主とのやりとりである。国や地域によってさまざまなので、いちがいには言えないが、住宅の設備などの故障や修理の必要な不具合などは、日本の住宅より多いと考えておくべきである。その際の修理の手配や費用の負担などで貸し主との間でトラブルが起こりやすい。貸し主の責任と負担で修理や交換などをしなければならない場合でも、対応が遅かったり対応を渋ったりするケースをよく耳にする。 たとえば、東南アジアの国々ではその気候条件から一年中エアコンを使用することになり、必然とエアコンの故障も日本と比べて多くなる。このような国々では、契約時にエアコンのメンテナンスの責任を明確にしておき(貸し主の負担で修理するという条項)、入居中の故障に対応できるようにしておく。 退去する際に原状回復義務があることは日本と変わらないが、必要以上の清掃代や修理費を請求されてトラブルになる場合もある。契約時に条文の内容をよくチェックし、自然損耗などによる汚れや損耗に対しては、借り主は修理義務を負わないことを確認しておこう。
住宅探しは信頼できる不動産業者に依頼し、その国でよく起こるトラブルなどを事前に聞き、契約前に可能な限り予防策を講じておくことである(入居中の修理負担条項、退去時の負担条項、帰任による途中解約の条項など)。経験豊富で良心的な業者ならば、貸し主寄りに偏りすぎない、日系駐在員の傾向を把握したうえでの契約交渉を貸し主に対して行ってくれるであろう。貸し主がその国以外に住む個人投資家などの場合には、入居後のフォローをその業者がきちんと対応してくれることを確認しておく。

現地銀行口座の開設

住宅を借りる際に、現地に銀行口座がないと貸してもらえない場合も多い。通常、銀行口座はビザがあれば開設できるので、パスポートとその写し、当座に預ける通貨をもって銀行に行けばよい。 手続きは簡単で、勤務先の住所を登録しておけば、数日で小切手帳も作ってくれる。
アメリカの場合、「臨時の個人小切手帳(Temporary Personal Check)」をその場でもらっておこう。住宅の契約の際、申込金やデポジット(手付け・預託金)を払うのにクレジットカードや現金は受け取ってくれないケースが多いからである。