海外赴任リロケーションガイド赴任の準備方法や手順など、生活の基盤となる情報をご紹介

帯同の検討

夫婦・家族で話し合う

海外赴任は、家族のあり方や子どもの将来について、いやがおうでも考えさせられる契機になる。赴任先に、よほどの問題がないかぎりは家族帯同が望ましいのだが、子どもの教育問題、とくに子どもが有名校に在籍している場合は悩みも大きいと思われる。
子どもを日本に残していく前提として「安心できる預け先があるか」という問題は避けられない。また、本人の性格や成熟度、生活力などによっても、家族が別れて暮らすリスクは大きく変わってくる。
他方、海外に帯同する場合には、慣れない環境や異文化のなかで辛い思いをすることがないわけではない。とくに学齢期の子どもであれば、現地の学校に慣れるのに苦労するし、数年後帰国した際にも試練が待ち受けているので、本人が前向きな姿勢をもてるように支える必要がある。
いずれにせよ、家族のあり方や子どもの将来について夫婦がしっかりした方針をもち、家族全員でよく話し合っておかないと、辛さの度合いが増すことになる。また、赴任先の生活環境・教育環境についても、「何とかやっていける」と言えるまで調べておきたい。
「海外子女教育振興財団」などの専門機関、、企業の相談室やアウトソース会社、帰国した母親のボランティア団体など、相談できる場は決して少なくない。インターネットで相談に応じているサイトもある。「この国は絶対ダメ」という赴任国はないはずだから、帯同する場合の状況と日本に残す場合の状況とを、納得いくまで比較検討しておこう。

子どもが残る場合

中学・高校生の子どもを残す場合は、寮のある学校に編入学する、企業などの「子弟寮」に入る、学生会館など民間の寄宿舎に入る、といった選択肢が考えられる。よほど親しい親戚でもあればよいが、下宿生活はまず無理である。  寮のある学校については、海外子女教育振興財団が「帰国子女のための学校便覧」などで一覧表を公開しているし、受験情報誌などでも紹介されている。幼いころから全寮制の進学校に入学する予定で準備してきた場合は別として、最近は寮生活に耐えられない子どもも少なくない。本人に、相部屋となることや時間を守ること、作業分担などがあること、掃除・洗濯は自分ですることなどをよく説明し納得させる必要がある。
企業などの子弟寮は、転勤する社員・職員の子どものために設置するもので、教職経験のある夫婦が舎監として住み込んでいる場合が多い。通常は「賄い(食事)」はもちろん、いろいろ親代わりに面倒をみてくれる。場所や条件などについては勤務先の人事部に聞くとよい。
学生会館など民間の寄宿舎は、大都市の学校・大学に遠隔地から入学する青年のための施設で、探せば「賄い付き」のところもある。篤志家が設置したもの、あるいは都道府県の寮といったものから民間企業が経営する「学生会館」まで千差万別だが、中学・高校生まで預かるところは少ない。親代わりに面倒を見てくれるマネージャーが常駐しているかどうかも確かめておきたい。JOBAガーディアンシップセンターは学習塾が経営する寄宿舎で、教員も泊まり込んでいる。

高齢者が残る場合

高齢の父母を残していく場合は、本人の生活能力しだいでさまざまなかたちが考えられるし、近くに面倒をみてくれる親戚がいるかどうかによっても変わってくる。何はともあれ、市区町村の役所の担当窓口(「高齢者福祉課」「保健福祉センター」「社会福祉事業団」など)に相談してみるとよい。「寝たきり・独り暮らし」の高齢者のためのサービスや、近くにある老人ホームなども紹介してくれる。  最近、学生会館のノウハウを背景に、高齢者を受け入れる施設もできてきた。一般の老人ホームのような高額の「一時金・保証金」は不要で、賃貸住宅とほぼ同じ契約形態になっている(2年ごとの更新で、入居・退去はいつでも可能)。施設にはケアのマネージャーが常駐するなど救急体制が整えられている。また、各部屋のキッチンで料理ができたり、食堂で食事をとったりすることもできるなど、住む側に立ったサービス体制が整っている。通常は介護サービスのシステムも用意され、途中から介護が必要になった場合でも、そのまま住み続けることができる。
いずれにせよ、所帯を分けることは出費がかさむことにつながる。しかし、子どもや高齢者を学生会館やシニア住宅などに預ければ、空き家になった自宅を賃貸して運用することも可能になる。「仕方がない」などと後ろ向きに考えないで、前向きな生活設計を心がけたい。