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荷物の選択

電気製品

電気製品を持っていくべきかどうかはすでに説明した通りだが、最後は家族一人ひとりの「こだわり」しだいになる。ここでは考えるにあたっての参考事項をいくつか挙げてみよう。 一点目は、赴任国の電圧事情である。電圧は各国で異なるので、日本の製品を持ち込んだ場合は、その国の電圧に合わせた変圧器(トランス)を用意しなければならない。世界の電源電圧は、次のように大きく三つに分類できる 。

AC120V地域

アメリカ、カナダ、ハワイ、グアム、中南米(一部除く)など

AC220V地域

英国を除くヨーロッパ、アフリカ、東南アジア、中国など

AC240V地域

英国、シンガポール、マレーシア、大洋州(一部除く)など

100ボルト用の日本の電気製品を、それぞれの地域の電圧に合わせるための変圧器は「600ワットまで」などと容量が定められている。したがって、変圧器を購入する際は、同時に使用する電気製品のワット数を合算して、それが収まる容量のものを選ぶ必要がある。また、地域によっては電圧が不安定なところもあるので、パソコンなどを使う場合には「定電圧電源装置の内蔵された変圧器」を用意したい(248頁「 海外で日本語のパソコンを使う」)。
電源プラグの形式は右頁の通り7種類あるので、トランス側のプラグをその形式に合わせる必要がある。購入する店で、赴任する国・地域の形式を調べて取り付けてもらうか、必要なプラグ変換具が付属していることを確認して購入する。
二点目は、そこのテレビ放送の放送方式(走査線の数、映像電波と音声電波の間隔など)とカラー方式(NTSC、PAL、SECAM)の問題である。 それらが日本と異なる国・地域では、テレビもビデオ/DVDデッキも受信できないため、日本から持っていったソフトを楽しむだけの機械となる。かつてはチャンネル方式(各チャンネルの周波数配分)も問題だったが、最近は通常ユーザーが周波数を調整できる構造になっている。
三点目は赴任期間である。任期が1~2年と短い場合は、冷蔵庫や洗濯機などの大型家電を日本国内に保管しておくほうが合理的かもしれない。2年を超えるようなら、誰かに譲る、廃棄処分する、あるいはカネと手間をかけて海外に持っていく、のいずれかになる。
四点目は赴任国の電気製品にたいする規制の問題である。情報管理のほか宗教上や風俗上の観点から、持ち込みを厳しく規制している国も少なくない。年々規制状況も変わっていくので、引越業者に頼んで調べてもらおう。法律上は禁止・規制対象となっていても、業者が何とか通せるというのなら賭けてみてもよい。ただし、没収や課税、あるいは罰金も覚悟しておくことである。
電源が電池式の製品は、現地で同じ電池を購入すればよい。乾電池の仕様は世界共通だが、リチウム電池などには入手の難しいものもあるので、前任者などに確かめよう。 220ボルト以上の電圧になると、湯沸しポットはすぐ沸くし、アイロンもあまり待つことなく使えるので快適である。ところが、日本から持っていった電気器具を変圧器を通して使うとだいぶ待たされる。変圧器の質が悪ければ、110ボルト以上を出力していることもあって、故障しやすくなる。

家具

タンス類や棚類は中身をすべて出して梱包する。ガラス戸が付いている場合は、はずして別に梱包する必要がある。
大きな楽器やピアノなどを運ぶ場合は引越業者で扱えるか、または別途手配が必要かの確認をとる。比較的小さな楽器のバイオリンやフルートなどは、手荷物として持っていくほうがいいだろう。
特別な家具として、仏壇や神棚を送る場合も中身は別に梱包する。線香などは現地では手に入らないものも多いので、少し多めに準備したほうがよい。
勤務先の定める引越荷物の重量制限から、家具を持っていけない場合があるので確認しておこう。また住む家によっては、家具付きのアパートであったり、地域によってはせっかく持っていった家具が湿気でいたんでしまったりするケースもある。現地に行ってから必要な家具の購入を考えるのも賢明だろう。
現地の住居環境をよく確認し、家族の財産ともいえる家具をどうしたらよいかを考えたい。

衣類・下着類

現在使っている衣類・下着類は、そのまま持っていくのが原則である。最近はどこの国でも、たいていのものが手に入るようになっているが、品ぞろえやブランドものまでは難しい地域もある。欧米系メーカーの製品はサイズが合わない場合が多いが、ティーンエージャーの売り場に行くと、結構満足できるものがある。
子どもの衣服などはすべて持っていき現地で子どもの成長に合わせて買い足していく。浴衣は、交流学習その他の行事や活動に必要だし重宝もする(丈が伸ばせるものを用意する)。純綿の下着を心配する人も多いが、日本の下着もよく調べれば、少し化繊が混じっている。あまり神経質にならないようにしよう。
日本文化紹介などのために、大人も浴衣や下駄、和服・帯・草履などを用意してもよいが、現地で誰かにあげても惜しくないくらいの廉価なものにする。海外には洗い張りや染み抜きなどをしてくれる職人がいないので、高価なものはもったいない。最近は、洗濯機で洗える和服・帯(化繊)などが売られているので、海外旅行用品専門店などに相談してみるとよい。

食料品

海外でも、日本の食料品がだいぶ手に入るようになった。日本に比べて割高だったり「少し古い」と思ったりすることもあるが、「日本食品がまったく手に入らないため寂しい思いをする」といった地域はほとんどない。
米も手軽に入手できるようになった。とくにカリフォルニア米やオーストラリア米、タイの香米などは、色・つや・粘りなどが日本の米と似ているし、値段は日本米よりもはるかに安い。モチ米も売っているが、うるち米に化けた粒(優性遺伝のため)が混ざったものも少なくない(餅つき大会前に一粒ずつ選り分けるのが恒例化した日本人会すらある)。おはぎや赤飯には、そのまま使える。餅は、たいてい真空パックのものを手に入れることができる。
世界中どこへ行っても麺料理はあるものの、ときには日本のそばやうどんが恋しくなることがある。日本食料品店で売ってはいるが、乾麺を少し用意しておくとよい。しけらないように包装しよう。袋入りの即席ラーメンやカップラーメンも、おやつや夜食代わりとして重宝されている。乾麺同様、賞味期限内に食べられる程度の量を引越荷物に入れておくとよい。 調味料もたいていのものは手に入る。中国製の醤油(少し酸っぱい)などは極端に安いが、煮物に使う場合は日本製と変わらない。わさび、辛子、七味、山椒など和風スパイスも基本的に手に入る。昆布、ワカメ、削り節、海苔、干ぴょうなどの乾物類は比較的保存がきくので、台所にあるものはすべて持っていくようにしよう。ただし、しけたりカビがついたりしないように、梱包には注意したい。
お茶もぜいたくをいわなければ入手できるし、日本から来た人にお土産でもらうことも多い。赴任中、一度もお茶を買わずにすんだという人さえいる。むしろ重宝なのは茶缶(茶筒)のほうで、調味料などの保管にも役立つ。いくつか荷物に入れておくと、あとで助かることがあるはずだ。

台所用品

台所用品は、重くてかさばるものも少なくないが、普段から使い慣れたものはすべて持っていったほうが安心である。ただし、引越荷物を出したあと、出国するまでの間に使う道具をどうするかを考えておく必要がある。鍋や釜を近所や知人からしばらく借りられると助かるし、最後に残った調味料や安物の食器なども引き取ってもらえれば無駄にならない。 和食器類は海外では入手しにくいので、できるだけ持参する。ただし、乾燥しやすい国に漆器などを持っていくと、すぐにひび割れるし、床がタイル張りの生活ではガラス・陶磁器もよく割れる。高価なものは日本に置いていったほうが無難である。「お屠蘇セット」や茶道具なども、必要ならば安いものを買っていこう。最近の「工業漆」は玄人もだまされるほど質がよい。
赴任地で引越荷物が届くまでの1~2週間は、安い西洋皿とスプーン、マグカップだけ買えば何とかなる。

日用品

日用品も現在使用している用具は、すべて持っていったほうがよい。「こんなものは海外では不要!」とばかり、思い切りよく日本に置いてきたのはいいが、思わぬ不便を強いられたという話をよく耳にする。外国では、入手が困難ということではなくて色や柄、大きさなどで気に入るものがなかなか見つけられないということである。スリッパやサンダル(室内・室外用とも)、工具類なども、わざわざ買いにいく時間がとれなかったときに不便する。ハンガーや洗濯バサミ、タオル類もそうである。
小学校高学年から家庭科で使う「裁縫道具セット」は、子どもが小さくても買っておくと便利である。教育用であるため、縫い針と糸の品質、とくに強度が優れている。ミシン糸も少し持っていくとよい。
子どもの使っている学用品は、親の目からはゴミに見えるものでも、すべて持っていくことである。使いかけのノートですら「心の支え」になるので、おカネにはかえられない。

化粧品

化粧品は、赴任先の規制・課税対象品となっている可能性があるし、大量に持っていっても変質の心配がある。ふだん使い慣れているものを少し買い足して持っていき、足りなくなったら赴任国で似たようなものを調達すればよい。どこの国でも大都市に行けば、国際的ブランドを扱う店舗がいくつかある。

いま履いている靴はすべて持参しよう。履かなくなるとすぐに傷んだりカビが生えたりする。男性用の24センチ以下、女性用の22センチ以下の靴、また足幅の広い靴は、海外では品ぞろえが限られている。子ども用の運動靴は、海外ではヒモ式がほとんどなので、ワンタッチ式やズック式などが好きな子には、一足よけいに買って送ってもよいだろう。サンダル、つっかけ、草履、ゴム長靴なども、まだ履けるものなどは送るようにしよう。

趣味・娯楽

必要に応じて日本画や日本人形、掛け軸などを持っていくと生活に潤いが生まれるが、日本とは気候風土が違うので、やはり傷んだり壊れたりすることを覚悟し、高価なものはもっていかない。書道・華道・茶道・手芸・麻雀・囲碁・将棋・トランプ・ゴルフ・テニス・釣りなど趣味や娯楽の道具、スポーツ用品なども、できるだけ持っていくとよい。海外では多趣味が身を助けることが多いので、道具があると助かる。赴任国の輸入禁制品である場合もあるので、引越業者とよく相談しておこう。

持っていってよかったもの

日本にいると気づかない、現地に行ってほしくなる、そんな物を集めてみた。もし、現在の生活でも必要だと感じるものは用意しておこう。

電気製品

変圧器・電気炊飯器・電子レンジ・グリル鉄板・電気こたつ・電気ストーブ・電気毛布・ドライヤー・ホットカーラー・カセットテープ・扇風機・アイロン・電気スタンド・布団乾燥器・電池
※電圧・通関の問題があり、トランスの準備、保証書なども忘れず携帯する。

台所用品

包丁・砥石・まな板・蒸し器・すき焼き鍋・土鍋・すり鉢・おろし金・魚焼き用の鍋・巻き寿司用のすだれ・漬物用セット・しゃもじ・おたま・重箱・ふきん・箸および箸置き・日用和食器・湯呑み・急須・酒器
※和食器は入手しにくいので、十分な数を持っていくといい。
※漆器製品は、乾燥のためひびが入ることもある。

衣料品

肌着・ワイシャツ・子供服・ゆかた・和服
※外国製の衣類は日本人のサイズに合わないことがある。

日用品

ほうき・物差し・体重計・巻尺・大工道具・ぞうきん・洗濯ばさみ・うちわ・裁縫セット・医薬品・予備のメガネ、コンタクトレンズ・布団・座布団・電卓・おもちゃ・日用化粧品・書籍・学用品