海外赴任リロケーションガイド赴任の準備方法や手順など、生活の基盤となる情報をご紹介

赴任地での住居

家を探す

赴任地での住宅探しは学齢期の子どもがいるか、単身または夫婦のみかなどによってポイントが変わってくる。 学齢期の子どもがいる場合は、居住する地域の選択肢に限りがある。これは、海外の小中学校では、スクールバスでの通学か両親の送り迎えが原則である場合が多いためである。スクールバスの運行路線から大きくはずれた地域や、送り迎えに不向きな遠隔地は学齢期の子どものいる赴任者にとっては選択の対象外である。多くの場合、通勤の便を多少犠牲にしても、子どもの通学を優先することが必要になってくる。
一方で、単身赴任や夫婦のみの家族の場合には選択肢はぐっと広がり、通勤と日常生活の便利さを優先して家探しをすることが多い。必然的に子どものいない赴任者は、市街地の中心部に居住しているケースがどの都市でも多いようである。
日本人が集中して住む住宅地やマンションを選ぶのか、そうでないのかもよく考えたほうがよい。日本人駐在員が多ければ安心だが、その一方で狭い日本人コミュニティーのつきあいにストレスを感じてしまう場合もある。 また、セキュリティーの問題は何より優先される。治安の良い住宅地なのか、24時間ドアマンを配置したマンションなのか、などは赴任国によっては最も重視する点となる。
実際の家探しは前任者の住居を引き続き借りるか、現地の不動産エージェントに依頼して物件を紹介してもらうかのいずれかとなる。比較的大きな都市に赴任する赴任者は、エージェントに依頼して自分で物件を探すケースが多い。この場合、所属企業の住宅規定の範囲で探すのだが、注意する点は信頼できるエージェントに依頼することにつきる。国や都市によって住宅に関する慣習はまちまちで、契約する際に注意する点への的確なアドバイスや、入居中や退去時のトラブルにも対応してくれるエージェントに依頼するようにしよう。
世界の主要都市には、たいてい日系の不動産エージェントが営業している。日系がいつもベストであるとは言えないが、言葉に不安を感じるようであれば日系エージェントを利用したほうが安心だろう。最近では自社のホームページで、現地の物件情報などを紹介しているエージェントも増えてきているので、情報収集には積極的に利用しよう。

アパートメントホテル活用術

海外赴任に際して、借りる家が決まる間や、本人のみが先に赴任して家族があとから来るのを待つ、というような場合に便利なのがアパートメントホテルである。ホテル式アパートメント(中国語では酒店式公寓という)などと呼ばれる場合もある。通常は1か月以上の滞在から利用可能だが、物件によっては1週間単位の利用が可能なものもある。
アパートメントの居住性とホテルの利便性を兼ね備えた理想的な住居といえる。ハウスキーピングや24時間のフロントサービスがあり、部屋にはキッチン、洗濯機、調理器具、食器などが完備されている。ハウスキーピングもホテルのように毎日から1週間に1回というようなリクエストが可能なため、週末は誰にも部屋に立ち入られることなくのんびり過ごしたい、というような要望にも応えてくれる。
間取りもスタジオタイプ(ワンルーム)から3ベッドルームまで豊富で、人数によって使い分けが可能だ。日本人によく利用される日本語対応可能な物件も多いと聞く。家賃は普通のアパートメントなどを借りるよりは高額になる。ただ、地域によってはホテルのマンスリーレートより安い場合があり、1か月以上の仮住まいには有力な選択肢となるだろう。
自分が赴任する都市でのアパートメントホテルの情報は、任地の同僚などに尋ねるか、日系企業を相手に住宅の斡旋をしている現地の不動産会社に問い合わせてみるとよいだろう。一部の都市では日本人が運営する生活情報のウェブサイトなどで、日本からの予約が可能になってきている。

快適に住むために

ある調査によれば海外赴任で嬉しかったこと、良かったことの上位に現地で豊かな住生活が送れたことが挙げられている。これは海外の住宅事情が相対的に日本より豊かなことや、途上国であっても勤務先の負担で外国人向けの高級アパートメントなどに住むことができることが理由となっている。広いリビングのある自宅に友人を呼んでホームパーティーを開いたり、庭付きの一戸建てに住みガーデニングを楽しんだりと、在外中の経験がよい思い出になっているのである。
居住する住宅が日本にいたころより格段に広いことや、共有施設が充実していることに比べて、設備の故障などの住宅の基本的な性能は日本の住宅と比べて劣る場合も多い。たとえば、欧米では建築後30年以上の一戸建てでも十分に現役の住宅であるし、アパート(マンション)では建築後100年近い物件も多い。必然と基本的な性能が劣ったり(たとえばシャワーの温度が安定しないとか、水流が弱いなど)、故障が多かったりすることもあるが、些細な不具合を気にしすぎるとかえってストレスとなることもある。途上国で日系駐在員が住む住宅は、現地の人びとからみれば豪邸である。窃盗の被害に会う危険性を十分に考慮して安全対策にはとくに気を配ろう。
異国でのハードな仕事や不慣れな外国語での生活環境の中で、ゆったりとした住環境を家族とともに満喫して「有意義な海外生活」を楽しめるよう心がけたい。

家具はどうする

海外の賃貸物件は家具付が相場、という地域が多い。一概に家具付といってもどこまでの家具が備わっているのかは物件によってまちまちである。一般的に「家具付」といえば、ソファーセット、ダイニングセット、ベッド、大型家電(冷蔵庫、エアコン、洗濯機など)が備わっていると考えてよい。勤め先の規定範囲めいっぱいに、大型家具などを持ち込んでも、邪魔になるだけということも考えられる。また、日本の一般的な住宅に合わせて作られた家具は、現地の住宅に運び込んでみたらサイズが小さすぎ部屋に合わなかったりして、任期中ほとんど使わなかったということもよくある。
どの家具を持ち込むのかは、任地で借りる住宅の状況をよく見極めて判断しよう。無駄な家具は持っていかない、任地で無駄な家具の購入を避ける、この2点がポイントである