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帰国生入試の基礎知識

海外子女教育振興財団(2022)「ただいま何人!?」在外教育施設在籍者数によると、2022年4月現在、海外に長期滞在する小学生は32,991人にのぼる。「帰国子女」となった子供達にとって、中学進学は大きな分岐点となる。帰国子女の入試状況をよく知り、子供にとって望ましい中学生活をスタートさせるための準備が必要である。

受け入れ方針

「帰国生の受け入れ体制」を持っている学校は多数あるが、その方針は大きく3つに分かれる。
①海外に長く滞在していた帰国生を対象に、学習のフォローや日本の学校生活への適応指導をする。
②帰国生が持っている外国語能力や海外経験で得た特性などに期待し、その能力を伸ばす。
③国際理解や外国語教科の推進役として帰国生に期待するが、あえて特別扱いはしない。
①や②の場合、帰国生だけでクラスが構成されていたり、特定の教科(主に「英語」)を帰国生やその教科において優秀な者のみで学ぶ「取り出し授業」があることも多いようだ。③は、一般生徒と同じクラス・カリキュラムで指導を受ける。

出願資格・条件

入学、編入学試験ともに、帰国生として受験する場合の出願資格・条件の代表例は下記の通り。

①海外での学校種別

海外での外国の学校教育を受けた者。在籍した学校が日本人学校のみの場合、帰国生入試の受験が認められないこともある。

②海外(継続)滞在年数

一番多いのは「2 年以上」。「1 年以上」という学校もある。

③ 帰国後の経過年数

多くは「帰国後 1 年~ 3 年以内まで」だが、地域や学校によって様々。
海外に滞在していた年数によって経過年数を変動させるなど、細かい規定を設けている学校もある。
但し、こうした規定を完璧に満たしていなくても、柔軟に対応してくれる学校もある。規程を満たしていない場合でも、まずは直接問い合わせてみることを勧める。

選考方法

入学試験

帰国生として受ける試験。その選考方法は以下の3つに大別される。

  • 別日程の特別試験を実施
    一般入試とは別に、「帰国生 "専用"」の日程・内容で行う。
    選考内容で多いパターンは、「国語、算数」の 2 教科、または、「国語、算数、英語」の 3 教科の教科試験に「面接」や「作文」を加えるというもの。
    また、数は多くないが、教科試験は「英語」の 1 教科のみまたは「行わない」という学校もある。その場合、「作文」と「面接」もしくはどちらか 1 つが課されることが多く、ときには「適性試験」が実施される。

  • 合格基準を特別に設定
    一般入試と同じ日程・内容で行うが、選考にあたっては科目数に配慮したり帰国生のみ面接を行うこともある。

  • 一般入試とほぼ同一
    帰国生枠自体はあるが、一般入試と全く同じ日程と内容で実施。合格基準に関しては、多少の配慮をする場合もある。

編入試験

編入学試験の多くは、以下の方法で選考される。

  • 3 教科(国語、数学、英語)+ 面接、主流パターン。これに「作文」が加わることもある。

  • 英語(教科試験やエッセイなど)+面接、英語圏の現地校や国際学校に通っていた生徒、つまり「英語による学校教育を受けてきた生徒」を意識した内容。外国語能力試験のスコアを評価の対象にする学校もある。

時期と募集人数

入学試験

①時期

多くは 2 月の一般入試に先駆けて「11月」から始まり、「2 月中旬(ごく数校は 3 月)」まで続く。中学校の帰国生入試の場合、受験の 1、2 年前に帰国して受験準備をしている子供も少なくないようだ。この場合、保護者がサポートする部分も多く綿密なスケジューリングが必要だ。

②募集人数

「定めず」、「若干名」など明示しない場合が多い。

編入試験

①時期

「9 月編入」に向けての 1 学期末(7~ 8 月頃)と、「4 月編入」に向けての3 学期末(3 月頃)に集中している。
 また、実際の編入時期は、「随時」や、「学期の開始から」と様々だが「1 月編入」に向けて 2 学期末(12 月頃)に実施したり試験を「随時実施」してくれる学校もある。
 但し、編入学試験は「欠員募集」であることが多いため、実施されない年度もあり、実施することが決まったとしても募集要項が募集時期ギリギリにならないと決まらないこともある。例えば、9 月編入用なら 6 月頃に出願書類を入手し 7月に試験を受けるという具合だ。対策としては、日頃から志望校を調査しておき、帰国のタイミングが突然来てもすぐに動けるようにしておくことだ。
 また、公表はしていなくても、個別に相談すれば特別に実施することもある。

②募集人数

一定人数を各学年で定期的に募集する学校はかなり少数で「欠員分」、「若干名」など人数を明示しない学校が大半だ。また募集学年は高 2 までが主で、高 3(2学期以降)を対象にする学校はあまり多くはない。

情報収集

滞在中に早めにしておきたい準備は志望校の選定だ。入学試験にせよ編入学試験にせよ子供に合った学校を子供と一緒にリストアップしておくことは、保護者の大切な役割だ。志望校の選定は以下の通り。
①インターネットで総合&学校独自のサイトを閲覧。
②海外から受験関連の情報誌を入手。
③海外にある「日本の受験塾」で情報を入手。
④海外の大都市をメインにして行われる日本の学校の【合同】説明会に参加。
⑤一時帰国などを利用して、日本で行われる「学校説明会」や「入試説明会」に参加。
⑥一時帰国時などに、文化祭などの学校行事を見学。
⑦各学校に直接電話やメールで問い合わせる。

出願書類の手配&作成上の注意点

帰国生として受ける試験の場合、現地で在籍している学校や保護者の勤め先に依頼する書類、オリジナルで作成する書類など国内一般の試験よりも準備すべきものは多いので出願書類を入手したら、「早め早め」に準備しておこう。

①入学願書

記入例などを参考に、丁寧で読みやすい字で記入する。日本の住所が定まっていなくても「仮住所」を記入する必要があるので、親類などに了解をとっておく必要がある。

②現地在籍校の成績証明書・成績表・在学証明書・卒業証明書

「成績証明書(コピー)」や「成績表(コピー)」を提出するのが一般的だが、「在籍証明書」や「卒業証明書」を提出するなど学校によって提出書類は異なる。また、これらの書類の「和訳」の添付を義務付ける学校もある。この場合は、成績表の評価基準の説明書も付けておく必要がある。(例:「1 が一番良く、5 が一番悪い」など)

③海外在留証明書

海外にどれくらいの期間在留していたかを証明する書類。通常、保護者の勤務先に依頼すれば、社印等のあるものを発行してくれるようだ。この他、独自の指定用紙への記入や、パスポートのコピーを提出することによって、出国・帰国日の確認をするところもある。

④受験料納入証明書

受験料を出願時に現金で直接支払う学校もあるが、事前に銀行へ振込み、領収書を出願書類に同封する場合が多いようだ。それ以外の振り込み方法(ネットバンキングや ATM)にする場合は、親類に依頼する必要も出てくるので証明書をどのようにするか要項で確認をしておく必要がある。

⑤活動記録・海外歴表・推薦状など

これらの提出を求める学校もあり、いずれも作成には時間が比較的かかるので、締め切りには注意しよう。

⑥日本国内の小学校の成績証明書(調査書)※ 帰国後に通った場合

帰国してから日本国内の小学校に通った場合は、卒業までの通知表のコピーを提出する。学校によって、「海外帰国子女証明書(書式自由)」や、帰国後に在籍した小学校の学校長に「在外歴の証明を求める」というように、独自の書類を要求されることもあるようだ。

学習の準備

入学試験

帰国生試験専用の「国語」「算数」(理科、社会)は、多くの場合の合格基準は「一般入試の基礎的なレベル」。それを念頭に置き学習を進めておこう。一般とほぼ同一で実施・選考されるなら国内生と同様、通信教育や進学塾を活用するなど更なる対策が必要だ。 
「外国語(英語)」が出題される場合は、概してレベルが高いようなので入手できれば過去問題や高校の参考書を使って学習を進めるのも良いようだ。また、教科試験が「外国語(英語)のみ」であれば、難易度はさらに高くなるので外国語能力試験の問題集で、文法、語彙、読解力、文章作成能力などを強化しておこう。

編入学試験

基本的には入学試験と同じ対策で良いが、「試験直前の学習」で履修した範囲から出題されることが多いため、あらかじめ志望校の進度を確認しておこう。(私立校は総じて進度が速いので注意が必要だ)また、「算数」が「数学」に変わることにも注意しよう。

①作文

使用言語は「日本語」または「外国語(英語)」の場合に注意すべきなのは、口語英語の力だけでは不十分であるということだ。文法や文章表現としての語彙が見られる。問題意識を持って自らの考えを決まった文字数で記述する力をつけるトレーニングをしておこう。

②面接

使用言語は「日本語」が多いが、「外国語(英語)」の場合もあるので表現方法を学ぶ他、経験や考えを整理しておこう。

入学後の対応

帰国枠のある私学は多くあるが、その内容は様々。
学校を選ぶにあたり出願資格、入試形態に加え入学後の対応を説明会等で確認しておこう。