海外駐在員向けの給与制度
海外駐在中は、多くの企業が、海外払いと国内払いに分けて給与を支給します。
海外払い給与は海外駐在員本人や帯同家族が任地で生活するための給与です。
国内払い給与は、単身で赴任する場合には、日本に残る家族が日本で生活するための給与であり、また海外駐在中も継続加入する健康保険料や厚生年金保険料の支払いなどに充てられます。
海外駐在中の給与の決定方法は、各種調査によると、海外展開している日系企業の約6 ~ 7 割が「購買力補償」という考え方に基づいて制度を設計しています。
購買力補償方式は " No Loss No Gain"を基本コンセプトとしており、日本と任地との物価差を補償し、任地においても日本での生活水準を維持することにより、海外駐在することによる損や得が発生しないしくみとなっています。
一昔前、海外への渡航が特別だった時代には、その特殊性への対応として、企業は海外駐在員に対して様々な手当を加算して支給していました。
昨今では、海外旅行が大衆化し、公使含めて海外への渡航が特別ではなくなったということも、多くの企業が購買力補償方式を採用する要因の一つと言えます。
一方、海外への渡航が特別なものでなくなってはいるものの、日本とは異なる商慣習の中でのビジネスであったり、海外駐在に伴う職責の拡大、また生活環境の違いなどに対しては、" No Loss No Gain" とは別に海外勤務手当やハードシップ手当といったインセンティブを支給する企業が多くあります。また、昨今は、積極的に海外駐在を希望する社員が多くない中、海外駐在の動機づけの一つとして、インセンティブを手厚く支給する企業もあるようです。
このように、購買力が補償されることによる生活面での安心感と、海外駐在に伴うインセンティブを効果的に組み合わせ、海外駐在中において最大のパフォーマンスを発揮できるようなしくみづくりが肝要と言えます。